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2016年3月29日 (火)

【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論      2016年03月28日 | ●佐藤優 

 

  
 ①駒崎弘樹『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』(PHP新書 820円)
 ②圀府寺司『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書 1,180円)
 ③細田晴子『カストロとフランコ 冷戦期外交の舞台裏』(ちくま新書 820円)

 (1)①は、大金持ちになることは望まないが、名誉と尊厳を維持できるレベルの生活を確保しながら社会的に意義ある仕事をしたいと考えている人のための本だ。実用性の高い内容がたっぷりと盛り込まれている。著者は、ソーシャルビジネス型のNPOや株式会社を成功させる重要な要素として、人事を挙げる。
 <「キャリアステップ」(今後のキャリアの展望)をきちんと示すことも重要だ。頑張って働き続ければ、やがて主任になり、園長になり、エリア統括になり・・・・といった具合に、キャリアの階段を明確に示す。それに合わせた「給与体系」も明確にしておく。こうした基準がしっかりあることによって、頑張ればキャリアは上がっていき、給料もアップしていくとスタッフは意識できる。そうした将来への見通しがあってはじめて、人はやる気になるものだ>
 まったくその通りだ。モラルだけで組織を維持、発展させることはできない。

 (2)②は、ユダヤ人の歴史を学ぶ上でも有益だ。
 <ユダヤ人の解放を実現したのはその財力ではない。反ユダヤ主義にとってみれば、完全な市民権のないユダヤ人から財産を没収するぐらいのことは決して難しいことではなかった。事実、そのようなことは何度も起こったし、ナチスの反ユダヤ主義政策を見ればそのことは明らかであろう。状況を大きく変えたのはやはり啓蒙主義思想であり、それはドイツにおいて「教養」(ビルドゥングBildung)という理想を生み出した>
 近代知識人にユダヤ人が多い理由が本書を読めばよくわかる。

 (3)③は、緻密な外交研究書であるとともに、リーダーシップ論としても秀逸だ。
 <指導者には、面子と名誉もある。外交交渉でも、長期にわたる良好な関係を築きたいならば、一方が大勝して禍根を残したり、一度だけの交渉の勝利をもって終わりにしたりしてはならない。フランコもカストロも、たとえば政治犯釈放の交渉を行うにもさまざまなテーマの包括的交渉を行い、一方的にどちらかがひとり勝ちする交渉をつくらなかった。本音と建前を使い分け、お互いの面子を立てながらの交渉であった。そのため対国内プロパガンダと、対国外パブリック・ディプロマシー、そして相手国の交渉相手によって態度をうまく使い分けていた。時として国民には真実を知らせずにだが・・・・>
 とても勉強になる。著者は、現在、日本大学商学部准教授だが、外務省時代は有能なスペイン語専門家として一目置かれていた。外交官としての現場感覚が本書に生かされている。

□佐藤優「ユダヤ人の歴史を学ぶ ~知を磨く読書 第143回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年4月2日号)

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コメント

 ユダヤはあまりにも洗脳的で、かつては好意的だったが今や否定的。それが次世代に対する義理だろう。

投稿: エルサレム | 2016年7月10日 (日) 21時20分

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